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技術資料
No.T2506 | 2025.06.04

金属触媒の劣化解析(ESCA、炭素分析)

概要

 金属触媒は固体触媒の一種で、金属酸化物などの担体に高活性の金属微粒子が担持されています。触媒劣化因子として、担持金属の変質やコーキング(触媒使用で生じる炭素蓄積)等が考えられます。本資料では、X線光電子分光法(ESCAまたはXPS)による金属価数、酸素燃焼赤外線吸収法によるコーキング量の解析事例を紹介します。

分析装置

1)金属価数解析(X線光電子分光法)

装置

VersaProbeⅡ(アルバック・ファイ製)

条件

X線源 AlKα1486.6eV

2)コーキング量解析(酸素燃焼赤外線吸収法)

装置

CS844(LECO社製)

試料量

10mg

試料

ルテニウム(Ru)触媒【図1
[担体:アルミナ(Al2O3)、水素化反応前後]

【図1】試料外観
(Ru担持Al2O3粉末)

【図1】試料外観
Ru担持Al2O3粉末)

結果及び考察

1)金属価数解析

 ESCAは試料にX線を照射して発生する光電子を検出する手法で、ピーク位置(結合エネルギー)から構成元素や化学状態、ピーク強度から組成を解析できます。検出可能な元素はLiUと幅広く、様々な金属触媒を分析可能です。

 触媒使用前後のルテニウム(Ru3d)及び炭素(C1s)ピークを図2に示します。Ru3dピークは原理的に2本に分裂します(Ru3d5/2, Ru3d3/2)。触媒使用後、Ru3d5/2ピークが低エネルギーシフトしていたことから、Ruが還元されていると推定されます。ピーク位置(約280.2eV)より、触媒使用後のRu価数は0価と考えられます。
 一方、C1sピーク(約285eV【図2】)は触媒使用後に増大し、コーキング(触媒使用で生じる炭素蓄積)が推定されます。ただし、C1sRu3d3/2とピークが干渉するため、ESCAによるコーキング量解析(C組成解析)は困難です。

【図2】Ru3d及びC1s高分解能スペクトル

【図2Ru3d及びC1s高分解能スペクトル

2)コーキング量解析

 酸素燃焼赤外線吸収法によってCを定量し、コーキング量を解析しました。同手法は試料を酸素気流中で加熱燃焼させ、CO2として回収した炭素を赤外線検出器で計測することで数ppm~数十%C濃度を評価できます。
 触媒使用前後のC濃度を表1に示します。計3回の測定結果は再現性良好であり、コーキング由来と考えられるC濃度の増加を確認できました。

【表1】C定量解析結果
Ru触媒 測定1回目 測定2回目 測定3回目 平均
使用前 0.13wt% 0.13wt% 0.12wt% 0.13wt%
使用後 4.7wt% 4.7wt% 4.7wt% 4.7wt%

まとめ

 ESCA及び酸素燃焼赤外線吸収法により、金属触媒の劣化因子となり得る金属価数変化やコーキング量を解析可能です。今回分析したRu触媒では、触媒使用後におけるRuの還元を明らかとし、コーキングを定量化しました。
 弊社では本資料以外の触媒解析技術も多数保有しており、触媒性能に寄与する構造因子を多角的な視点から評価できます。

 

適用分野
ゼオライト、セラミックス、その他無機製品
キーワード
金属触媒、固体触媒、価数、コーキング、劣化解析、ESCA、XPS、燃焼法、LECO

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