概要
高分子材料は、長時間の光照射を受けると、分子切断や架橋形成といった劣化を生じ、分子量が変化します。分子量は、強度や熱特性、加工性に大きく影響するパラメーターですので、劣化前後の分子量を比較することは非常に重要です。
ここでは、生分解性樹脂の一つであるポリカプロラクトン(PCL)について、光照射(耐候性試験)を行い、GPC(SEC)による分子量測定を行いました。
分析
1. 試料
PCL(プレスシート)
2. 耐候性試験
装置:アイスーパーUVテスター SUV-W161(岩崎電機製)
温度:50℃
湿度:40%
照度:100mW/cm2
3. 分析条件
装 置:HLC-8320GPC (東ソー製)
カラム:TSKgel GMHHR-H × 2本 (東ソー製)
溶 媒:クロロホルム
結果
GPCによって得られた、光照射されたPCLの分子量分布曲線を図1に示します。
分子量分布曲線から光照射24時間では、未照射と比較して、分子量約数十万以上の高分子量成分の割合の増加が顕著に見られ、分子量数万以下の低分子量成分の増加も見られます。このことは劣化初期では架橋に伴う高分子量化と共に、分子切断による低分子量化も進行していることを示しています。
光照射24時間以降、光照射時間の増加と共に高分子量成分の割合は減少し、240時間では分子量数万以下の低分子量成分が増加傾向を示し、分子切断による低分子量化が進行していると考えられました。
光照射時間と数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、およびz平均分子量(Mz)との関係を図2に示します。光照射初期ではMwとMzは一旦増加傾向を示した後、光照射後期では時間の経過に伴いMn、Mw、Mzが共に減少する傾向が見られました。Mzは主に超高分子量成分に影響を受ける平均分子量、Mwは主に高分子量成分に影響を受ける平均分子量、Mnは低分子量成分に影響を受ける平均分子量です。従って、今回のMn、Mw、Mzの結果は、架橋に伴う高分子量化と分子切断による低分子量化の影響を反映していると考えられます。