概要
フッ素系ポリマーは一般的に耐熱性、耐薬品性、絶縁性等に優れ1)、これらの機能制御には分子構造の制御及び把握が重要となります。しかし、溶液NMRによる分子構造解析は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような溶媒に溶解しないフッ素系ポリマーに対して適用することが困難です。このような材では、試料を溶解させず、固体状態を保持したまま測定が可能な固体NMRが有用です。
本技術資料では、近接した19F-13C相関を得る19F-13C CPWISE*1測定、近接した19F同士の相関を得る
19F-19F EXSY*2測定の2つの固体2次元NMRを用いたフッ素系ポリマーの分子構造解析事例を紹介します。
分析方法・分析装置
・分析方法:19F-13C CPWISE*1 *1Cross Polarization Two-dimensional Wide-line Separation
19F-19F EXSY*2 *2Exchange Spectroscopy
・分析装置:400MHz NMR
試料
Nafion
結果
Nafionはフッ素系ポリマーの一種で、燃料電池やセンサー等で利用されており、固体NMRによる解析事例が報告されています2)。19F-13C CPWISE、19F-19F EXSY測定を行い、Nafionの分子構造解析を行いました。
19F-13C CPWISE測定(図1)より、直接結合したフッ素-炭素原子間の相関ピークが観測されました。また、19F-19F EXSY(図2)より、近接したフッ素原子間の相関ピークを得ることができました。
まとめ
固体2次元NMR測定を行うことで、フッ素系ポリマーの分子構造解析を行いました。材料を溶解することなく測定することで、固体状態を保持したポリマー材料の分子構造-物性相関解析への応用が期待されます。
参照文献
- 1) 社団法人日本分析化学会, 高分子分析研究懇談会編, 新版 高分子分析ハンドブック, 紀伊国屋書店.
- 2) M. Takasaki, K. Kimura, K. Kawaguchi, A. Abe, G. Katagiri Macromolecules 38, 6031(2005).