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技術資料
No.T2128 | 2022.01.15

ASAP法による異種核2次元NMR測定の迅速化

概要

異種核2次元NMR(1H-13C HSQC*a、HMBC*bが代表的)は有機化合物の分子構造解析に極めて有効な分析手段ですが、通常の1次元1H測定(数分間)と比較して長時間(数時間~1日)の測定が必要です。
弊社では、ASAP(Acceleration by Sharing Adjacent Polarization)法1)と呼ばれる高速化手法を適用した2次元 1H-13C ASAP-HSQC2)、IMPACT*c-HMBC(ASAP法を適用したCT-HMBC)3)測定を導入しており、待ち時間の削減による測定時間の短縮(1/8~1/4程度)を実現しています。
 *a Heteronuclear Single Quantum Coherence
 *b Heteronuclear Multiple Bond Connectivity
 *c IMProved and Accelerated Constant Time

分析方法・分析装置

・分析方法:2次元 1H-13C ASAP-HSQC、IMPACT-HMBC
・分析装置:700MHz NMR、500MHz NMR

以下にパルスシーケンスダイアグラムを示します。

【図1】 2D 1H-13C ASAP-HSQCのパルスシーケンス
【図2】 2D 1H-13C IMPACT-HMBCのパルスシーケンス

試料

キニーネ 重メタノール溶液

結果

キニーネの2次元 1H-13C ASAP-HSQC(図3a赤)、IMPACT-HMBC(図3a青)の測定結果を、通常のHSQC(図3b赤)、HMBC(図3b青)測定結果と比較して示します。ASAP-HSQC、IMPACT-HMBC測定では両者を合わせ通常測定の1/5の時間で同等のスペクトルを取得可能でした。


【図3】 a.キニーネの1H-13C ASAP-HSQC(赤)とIMPACT-HMBC(青)の重ね書きスペクトル
b.キニーネの1H-13C HSQC(赤)とHMBC(青)の重ね書きスペクトル
HSQC相関ピークとHMBC相関ピークの一部について帰属を示した。

まとめ

2次元1H-13C ASAP-HSQC、IMPACT-HMBC測定では、有機化合物の構造解析に有効なHSQC、HMBCスペクトルを通常測定より短時間で取得可能です。経時変化を起こす不安定な化合物の構造解析や、繰り返し測定の反応追跡による反応機構解析等への活用が期待されます。

参照文献

  • 1) E. Cupce et al. Magn. Reson. Chem. 45, 2-4 (2007)
  • 2) D. S. Sunninghausen et al. J. Am. Chem. Soc. 136, 1242-1245 (2014)
  • 3) J. Furrer Chem. Commun. 46, 3396-3398 (2010)
適用分野
NMR、分子構造解析、測定時間短縮
キーワード
医薬品、農薬、天然物、有機化合物

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