概要
弊社ではサイズ排除クロマトグラフ(SEC)と様々な検出器を組み合わせた分析試験を御提供しています。その中で、検出器に濃度検出器や粘度計を使用する方法は、現在かなり一般的な方法になりました。しかしながら、正確に理解されているとは言いがたい側面があります。
そこで、粘度計を用いた固有粘度算出方法について基本に立ち返った検討を行い、論文投稿を行いました[1]。前レポートでは、JISで規定されている測定法を中心に解説しました。
本資料では「ASTM D4603 – 03 Standard Test Method for Determining Inherent Viscosity of Poly(Ethylene Terephthalate) (PET) by Glass Capillary Viscometer」で採用されている方法について紹介します。
内容の御紹介
ASTM D4603では固有粘度の算出は次式を採用しています。
(1)
なおηrは比粘度です。分子量700万程度のポリスチレンでの計算例をFig1に示しました。
式(1)はF.W.Billmeyer,Jrが1949年に報告しています[2]。この報文でBillmeyerは9個の式を紹介しています。このうち、Solomon-Ciutaの式[3]と同じものもあります。これらは、高分子の希薄溶液の粘度を表す式であるHuggins式
(2)
の係数が1/3あるいは3/8に近くなることを利用しています。
式(1)による固有粘度[η]の計算例。赤い実線と赤丸印は式(1)、黒い実線と丸印はHugginns式(2)を示す。
【文 献】
- 髙取 永一、志村 尚俊、“濃度1点での固有粘度の測定-SEC-連続粘度計による固有粘度について-”, 日本ゴム協会誌, 81, 211-217 (2008)
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F.W.Billmeyer,Jr, J.Polym.Sci., Ⅳ, 83-86 (1949)
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O.F.Solomon, I.Z.Cuita, J.Appl.Polym.Sci., 6, 683 (1962)