概要
GPC(SEC)に光散乱検出器を接続することにより、ポリマーの絶対分子量を求めることが可能となります。ここでは、デンドリマーの分子量測定に応用した例を紹介します。
内容のご紹介
デンドリマーは、図1に示すように中心から樹木状に分子鎖が延びるという特殊な形状を持つ高分子化合物です。一般的なポリマーは分子量分布を有するのに対し、デンドリマーは高分子量でありながら単一の分子量を有すると言われています。今回は、水溶性のデンドリマーについて、GPC-MALSを用いた絶対分子量の測定を行いました。
[分析条件]
カ ラ ム : TSKgel G6000PWXL-CP + G3000PWXL-CP (7.8mmφ×30cm) (東ソー製)
溶 離 液 : n mol/L-NaNO3水溶液 (n=0.05, 0.1, 0.2)
カラム温度 : 40℃
流 速 : 1mL/min.
試 料 濃 度 : 1mg/mL
注 入 量 : 100μL
[試料]
(1) Cystamine Core PAMAM Dendrymer (G=6, 末端基=NH2, 256unit, MW=58139, Aldrich製)
(2) Cystamine Core PAMAM Dendrymer (G=4, 末端基=NH2, 64unit, MW=14306, Aldrich製)
(PAMAM : Polyamideamine)
[結果]
デンドリマー(1)、(2)についてGPC-MALSにより得られたクロマトグラムと絶対分子量を図2~3に示します。今回測定したデンドリマーは表面にアミノ基が導入されたカチオン性であり、溶離液中の塩濃度の増加に伴って、溶出ピークが遅れる傾向が見られますが、得られた絶対分子量は等しいことが分かります。また、デンドリマーは単一の分子量と言われていますが、今回用いた試料では、僅かに分子量の異なる成分が含まれていることも確認できました。
これらのデンドリマーの主成分の分子量として、溶出ピークトップの分子量Mpを表1~2に示します。表1~2では、標準ポリエチレンオキシド(PEO)の較正曲線から求めた換算分子量も示しました。得られた絶対分子量のMpは、理論値と比較的良い一致を示していることがわかります。
塩濃度の増加に伴って溶出時間が遅れる1)ため、GPC法による換算分子量では、塩濃度の増加に伴って得られるMpが低下する傾向が見られますが、これに対しGPC-MALS法によって得られたMpは塩濃度の影響を受けず、また、理論値とも近い結果となっています。
参考文献
- 1) 塩濃度の増加に伴って、溶離液中でのデンドリマーの分子サイズが低下するためと考えられます。詳細は、弊社技術資料(GPC法(GPC法)入門講座)、または下記文献2)をご参照下さい。
- 2) 香川,徳永, 分析化学, 58(3), 141 (2009) :別刷りを御希望の方は四日市事業部開発営業Gまで御連絡下さい。