概要
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)は高分子の分子量を評価する方法としてよく使用されています。イオン性高分子の測定ではカラム充填剤との相互作用を抑制するため、溶離液に種々の塩を添加する必要がありますが、添加する塩濃度によって分子サイズや充填剤との相互作用の程度が変化します。そのためGPC-RI(示差屈折率検出器)では、塩濃度によって換算分子量が異なった値となります。
そこで、GPC-MALS(多角度光散乱検出器)によるイオン性高分子の絶対分子量の測定例を紹介します。
分析
・試料
・測定条件
GPC | HLC-8020シリーズ (東ソー製) |
---|---|
MALS | DAWN HELEOS (Wyatt Technology製) |
カラム | TSKgel G6000PWXL-CP x1 (ポリアリルアミン塩酸塩) |
TSKgel α-M x2 (ポリスチレンスルホン酸ナトリウム) | |
溶離液 | 0.05~0.20M NaNO3水溶液,測定温度:40℃,流速:1.0mL/min,試料濃度:1.0mg/mL,注入量:100μL |
分子量標準 | PEO/PEG (Agilent Technologies製) |
分析結果
2種類のイオン性高分子のGPC-MALS測定結果を図1に示します。
図1より溶離液の塩濃度によって、どちらの試料においても溶出時間が変化していますが、ピークトップ付近の分子量はほぼ同じであることがわかります。
ポリアリルアミン塩酸塩(図1(a)と同一試料)のGPC-RI及びGPC-MALS測定による分子量分布を図2に示します。GPC-RIでは溶離液の塩濃度によって分子量分布が大きく変化していますが、GPC-MALSでは殆ど同じ分布を示しています。
表1にポリアリルアミン塩酸塩及びポリスチレンスルホン酸ナトリウムの重量平均分子量の計算結果を示します。溶離液の塩濃度を変えることによって、GPC-RIでは分子量(PEO/PEG換算値)が大きく変化します。この原因の1つは塩濃度によって分子サイズが変化したためと考えられます。また、GPC法では試料とカラムとの相互作用がないという前提で測定しますが、水系や極性有機溶媒系では相互作用が完全に解消されていないことも考えられます。一方、GPC-MALSによる絶対分子量は塩濃度に関係なくほぼ一定の値となっています。
従って、イオン性高分子の分子量を評価する場合、溶離液の条件によって得られる分子量が変わらないGPC-MALSによる測定が有効です。
NaNO3濃度 |
ポリアリルアミン塩酸塩 |
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム |
||
GPC-RI |
GPC-MALS |
GPC-RI |
GPC-MALS |
|
0.05M |
30 |
12 |
8.5 |
6.3 |
0.10M |
19 |
12 |
6.6 |
6.2 |
0.20M |
13 |
12 |
5.5 |
6.0 |