概要
リサイクル分取GPCは、カラムから溶出した分離不十分な成分を、何度も同じカラムを通すことにより、実際には長いカラムを使用したことと同等の効果を得ることができる手法です。 今回はポリ塩化ビニル(PVC)樹脂中の高分子量可塑剤を分析した事例をご紹介します。 なお、リサイクル分取GPC装置の詳細については、技術レポート(No.A1801)をご参照願います。
分析
試料としてPVC樹脂(SCIENTIFIC POLYMER PRODUCS, INC製 CAT#038C)に高分子量可塑剤としてエポキシ化大豆油(ESBO)と酸化防止剤(Irganox 1076)をそれぞれ30wt%、3wt%となるように配合したものを使用しました。
リサイクル分取GPCの測定条件は下記のとおりです。
装 置 : LaboACE LC-7080 (日本分析工業製)
カラム : TSKgel G2000HHR (21.5mmI.D. x 30cm) x2本 (東ソー製)
溶 媒 : THF(安定剤不含)
流 速 : 6.0mL/min
試料濃度-注入量 : 1.0wt%-1mL (10mg)
測定結果
図1にリサイクル分取GPCのクロマトグラムを示します。
比較的排除限界分子量の低いカラムを使用することにより、PVC樹脂をカラムの排除限界付近に溶出させました。2種類の添加剤成分を分取するため、最初の溶出でPVC樹脂成分をカットした後、添加剤成分のみをリサイクルしました。2回のリサイクルにより2種類の添加剤を完全に分離させ、それぞれのフラクションを分取しました。
図2に分取前後(分取後はFr-1、及びFr-2)のGPCクロマトグラムを、図3に分取後(Fr-1及びFr-2)及び標準試料(ESBO及びIrganox 1076)のFTIRスペクトルを示します。分取後Fr-1及びFr-2は、それぞれESBO、Irganox 1076の単独成分であることが確認出来ました。
PVC樹脂中の高分子量可塑剤は通常の抽出-GC法で分析するのは困難ですが、この手法を用いることにより高分子量の可塑剤を分離し、分取物を分析することができます。
主な応用分野
・ 目的成分の分別 (分別物解析用試料の採取)