概要
高分子の線膨張係数は必ずしも定数ではなく、分子配向等の影響を強く受けるため、製品形態での評価が望ましいといえます。しかし、製品形態が薄膜である場合や機械強度が弱い場合、従来のTMA法による線膨張率の評価では熱以外の要因で試料が変形してしまい、誤った評価結果になる恐れがあります。
弊社が独自に開発した非接触法による線膨張係数評価法では、試料に力学的な拘束を与える必要が無いため、温度上昇による試料軟化の影響を受けません。また、非常に脆い試料であっても評価することが出来ます。
分析事例の紹介
図1にアルミホイルの測定結果を示しました。図には同じ試料をTMA法で測定した結果も示しています(赤)。
TMA法では昇温-降温サイクルでヒステリシスを生じています。TMA法では試料に微小な力をかけるつづける必要があるため、クリープ変形してしまったためだと考えられます。一方、非接触法(青)では昇温-降温に伴うヒステリシスは観察されませんでした。このように、薄膜などの軟弱な試料の測定には非接触法が優れています。
また本手法は二方向の線膨張係数を同時に評価できるので、材料の異方性について情報を得ることが出来ます。PETフィルムの測定例を図2に示します。MD方向とTD方向では挙動が異なり、MD方向の配向が強いことがわかります。
また、収縮が3つの段階(MD収縮1段目→TD収縮→MD収縮2段目+TD膨張)でおきていることが分かりました。
適用分野
プラスチックス・ゴム、食品包装材
キーワード
ポリエステル、フィルム、光学フィルム、シュリンクフィルム