概要
酸化防止剤や紫外線吸収剤はポリマーの劣化防止を目的として加えられる添加剤です。難揮発性や熱分解性のためにGCでは測定が困難な種類を含めて、LC-TOF/MSを用いて一斉分析することが可能です。精密質量及び同位体パターンからピークを同定し、標準試料による検量線から定量を行います。
分析内容
・HPLCによる分離 ・ ピーク定性
ODSカラムによる逆相系条件によって、①Seesorb100、②BHT、③Tinuvin320、④Irganox1010、⑤Ultranox626、⑥Irganox1076(溶出順)を分離しました(Fig. 1)。精密質量分析の結果、理論質量数のm/z ±0.005の範囲内に主なピークが出現し、精度の高い同定が可能でした(Table 1)。
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用途 |
化合物 |
実測の |
理論上の |
構造 |
Seesorb100 |
紫外線吸収剤 |
ベンゾフェノン系 |
213.059 |
213.055 |
M – H |
---|---|---|---|---|---|
BHT |
酸化防止剤 |
フェノール系 |
219.179 |
219.174 |
M – H |
Tinuvin320 |
紫外線吸収剤 |
ベンゾトリアゾール系 |
322.196 |
322.191 |
M – H |
Irganox1010 |
酸化防止剤 |
フェノール系 |
1175.776 |
1175.776 |
M – H |
Ultranox626 |
酸化防止剤 |
リン系 |
431.143 |
431.138 |
M – C14H21 + O |
Irganox1076 |
酸化防止剤 |
フェノール系 |
529.467 |
529.462 |
M – H |
・定量性の確認
各イオンクロマトグラムのピーク面積から検量線を作成し、定量性の確認を行った結果、Fig. 2に示すように良好な直線性が得られました。百pg程度の微量でも検出が可能です。
濃度(ppm)
Fig. 2 検量線
・低密度ポリエチレン(LDPE)からの抽出
無添加グレードのLDPEを凍結粉砕し、浸漬型ソックスレー抽出を行いました。抽出に際して400mg/kgペレットの濃度となるよう①~⑥の添加剤を添加し、充分な平衡時間を持たせました。
抽出液中の添加剤の定量結果をTable 2に示します。概ね良好な回収結果が得られ、LC-TOF/MSはポリマー添加剤の一斉分析に有効な分析法であると言えます。また構造が未知の添加剤でも、TOF/MSの高い定性能力により同定が可能です。
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測定結果 |
回収率(%) |
①Seesorb100 |
402 |
101 |
---|---|---|
②BHT |
324 |
81 |
③Tinuvin320 |
399 |
100 |
④Irganox1010 |
392 |
98 |
⑤Ultranox626 |
317 |
79 |
⑥Irganox1076 |
408 |
102 |