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技術資料
No.T1022 | 2014.02.17

高分子材料中の酸化防止剤・紫外線吸収剤の一斉分析(LC-TOF/MS)

概要

酸化防止剤や紫外線吸収剤はポリマーの劣化防止を目的として加えられる添加剤です。難揮発性や熱分解性のためにGCでは測定が困難な種類を含めて、LC-TOF/MSを用いて一斉分析することが可能です。精密質量及び同位体パターンからピークを同定し、標準試料による検量線から定量を行います。

分析内容

・HPLCによる分離 ・ ピーク定性

ODSカラムによる逆相系条件によって、①Seesorb100、②BHT、③Tinuvin320、④Irganox1010、⑤Ultranox626、⑥Irganox1076(溶出順)を分離しました(Fig. 1)。精密質量分析の結果、理論質量数のm/z ±0.005の範囲内に主なピークが出現し、精度の高い同定が可能でした(Table 1)。

Fig. 1 HPLCクロマトグラム
 Table 1 質量分析結果      (APCI negative)

 

用途

化合物
種類

実測の
質量電荷比(m/z)

理論上の
質量電荷比(m/z)

構造

Seesorb100

紫外線吸収剤

ベンゾフェノン系

213.059

213.055

M – H

BHT

酸化防止剤

フェノール系

219.179

219.174

M – H

Tinuvin320

紫外線吸収剤

ベンゾトリアゾール系

322.196

322.191

M – H

Irganox1010

酸化防止剤

フェノール系

1175.776

1175.776

M – H

Ultranox626

酸化防止剤

リン系

431.143

431.138

M – C14H21 + O

Irganox1076

酸化防止剤

フェノール系

529.467

529.462

M – H

 

・定量性の確認

各イオンクロマトグラムのピーク面積から検量線を作成し、定量性の確認を行った結果、Fig. 2に示すように良好な直線性が得られました。百pg程度の微量でも検出が可能です。


濃度(ppm)
Fig. 2 検量線

・低密度ポリエチレン(LDPE)からの抽出

無添加グレードのLDPEを凍結粉砕し、浸漬型ソックスレー抽出を行いました。抽出に際して400mg/kgペレットの濃度となるよう①~⑥の添加剤を添加し、充分な平衡時間を持たせました。
抽出液中の添加剤の定量結果をTable 2に示します。概ね良好な回収結果が得られ、LC-TOF/MSはポリマー添加剤の一斉分析に有効な分析法であると言えます。また構造が未知の添加剤でも、TOF/MSの高い定性能力により同定が可能です。

Table 2 回収結果

 

測定結果
(mg/kgペレット)

回収率(%)

①Seesorb100

402

101

②BHT

324

81

③Tinuvin320

399

100

④Irganox1010

392

98

⑤Ultranox626

317

79

⑥Irganox1076

408

102

 

適用分野
プラスチック・ゴム、その他有機製品、食料品・飲料・飼料・食品包装材
キーワード
紫外線吸収剤、酸化防止剤、低密度ポリエチレン

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