概要
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に代表される芳香族ポリケトンは、スーパーエンプラに分類され、極めて高い機械強度、耐衝撃性、耐薬品性等を示します。一方、このポリマーは非常に高い耐薬品性のため、溶解できる溶媒がほとんどなく、分子量測定は、一部の特許に記載された塩素系混合溶媒を用いたGPC法などに限定されています。
今回、ペンタフルオロフェノール(PFP)を用いたGPCにより、各種ポリケトンの分子量測定を行いました。
分析事例
PFPは常温では固体(mp=34℃)であることから、そのまま常温GPCで用いることが困難な他、GPCの接液部の樹脂部品さえも溶解してしまうほど溶解性が高いという課題がありました。このため、GPC装置を耐PFP仕様に改造した上で、PFPにクロロホルムを加えた混合溶媒を溶離液として用い、GPCによる分子量測定を行いました。なお本法は、液晶ポリマー(LCP)の分子量測定に用いられている方法1)を応用しました。
1.主な分析条件
・装置 |
HLC-8320 (東ソー製) |
・カラム |
TSKgel SuperHM-H ×2本 (東ソー製) |
・溶離液 |
PFP/クロロホルム = 1/2(wt/wt) |
・流速 |
0.6mL/min. |
・温度 |
40℃ |
・試料濃度 |
0.1% |
・注入量 |
20μL |
・分子量標準 |
ポリスチレン (東ソー製) |
2.試料
・ポリエーテルエーテルケトン (PEEK) |
・ポリエーテルケトンケトン (PEKK) (1) : TPA/IPA=60/40 |
・ポリエーテルケトンケトン (PEKK) (2) : TPA/IPA=80/20 |
・ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン (PEKEKK) |
3.分析結果
各試料のGPCクロマトグラムを図1に示します。いずれの試料についても、良好なクロマトグラムが得られています。
図1より得られた微分分子量分布曲線を図2に示します。
以上の結果から、PFP/クロロホルム系GPCを用いると、芳香族ポリケトンの分子量測定が可能なことが確認できました。
参考文献:テクニカルインフォメーション No.107.東ソー株式会社