概要
HPLC法は各種有機化合物やポリマーの分離分析に不可欠な手法です。このうち、2つの異なる分離モードを用いて試料の分離を行う2D-HPLC(2次元HPLC)法は、特に共重合体の組成分布分析に有効な手法となっています。
本資料では、2D-HPLC法を用いてスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)の組成分布分析を行った結果について紹介致します。
分析事例
SBRは、耐熱性、耐摩耗性、耐老化性、機械強度等に優れており、自動車用タイヤ材料として用いられるなど、最も生産量の多い合成ゴムです。
SBRの重合方法は、溶液重合(S-SBR)と乳化重合(E-SBR)が用いられています。今回は、S-SBRとE-SBRについて、2D-HPLCによる組成分布分析を行った結果について紹介します。
用いたSBRの平均分子量と平均スチレン含有量を表1に示します。今回の分析では、1次元目に組成分離を目的としたGPEC(Gradient Polymer Elution Chromatography)、2次元目に分子量分離を目的としたGPCを用いました。得られた結果を図1~2に示します。
Mw (×104) |
Mw/Mn |
スチレン 含有量(wt%) |
備考 |
|
S-SBR |
48 |
1.7 |
20.0 |
溶液重合 |
---|---|---|---|---|
E-SBR |
27 |
2.9 |
22.8 |
乳化重合 |
【表1】分析に用いたSBR試料
これらの図では、横軸は分子量の対数値、縦軸はスチレン含有量を示します。また、グラフ右横のカラーバーは、検出器(蒸発型光散乱検出器;ELSD)の出力強度(mV)と色との関係を示しています。
S-SBRは、低分子量側と高分子量側に、分子量分布が狭い2つの成分が存在しています。これらの2つの楕円がほぼ垂直であることから、各分子量における平均組成が均一であることが示唆されます。
一方、E-SBRは分子量分布(横軸方向の広がり)、組成分布(縦軸方向の広がり)がS-SBRと比較して広く、また、等高線がやや左側に傾いて見えることから、低分子量ほどスチレン含有量が高い傾向であると考えられます。
以上のように、2D-HPLC法を用いることにより、試料間の分子量分布、組成分布の違いを視覚的に比較することができます。