概要
核磁気共鳴(NMR)装置では、高分子材料のモノマー組成・配列・末端等を定量的に評価でき、物性との相関を議論できます。弊社の700MHz NMR装置は大口径10mmプローブを備え、-130~150℃までの幅広い温度域で測定可能です。また、高感度高分解能なNMR測定ができ、より確度の高い情報をご提供できます。
本技術資料では、700MHz NMRによる13C-NMR測定を用いた高分子材料解析として、SBRの組成解析をご紹介します。
分析事例
SBRはスチレン(St)、ブタジエン(Bd)共重合体であり、St/Bd比やBdの異性体組成(シス/トランス/ビニル)が物性に影響を与えます【図1】。Bdの異性体組成は重合法(反応形式、温度、触媒等)により変化することが知られています1)。13C-NMR測定により、Bdの異性体組成を含む詳細な組成解析が可能です。重合法の異なる2種類のSBRに対して、700MHz NMR(10mmプローブ) で測定を行った結果を示します【図2】。ここでは各モノマーの単独ピークのみ帰属を示しています2)。
各試料に対してモノマー組成解析を実施した結果を示します【表1】。本結果より、今回測定した乳化重合品(E-SBR)はSt/Bd比が23:77でした。また、Bdの異性体組成はトランス体が最も多く、標準的なコールドタイプのE-SBRであることがわかりました。同様に、溶液重合品(S-SBR)についても組成比を評価可能でした。
高分子材料の組成はガラス転移点や耐摩耗性等、様々な物性に関与します。700MHz NMRでの解析によって、構造と物性との関係が明らかになることが期待されます。
参照文献:
1) 永田 裕 日本ゴム協会誌 88, 323-328 (2015).
2) M. Caprio et al., Macromolecules 35, 9315-9322 (2002).