概要
マイクロプラスチック(以下MPsと記す)とは、5mm以下のプラスチックと定義されており、プラスチック製品の破片、化学繊維、レジンペレット、マイクロビーズ、スポンジなどが起源とされています。MPsによる海洋汚染は食物連鎖により生態系全体に広がっていることが懸念されており、ヒトへの有害性について関心が高まっています。そこで、弊社では種々の方法でMPsの分析を試みています。
今回はマイクロプラスチックの中でもポリスチレンをターゲットとし、劣化の程度を把握するためにFT-IRとGPC分析を実施した結果を紹介いたします。
試料
分析
1.FT-IR
装 置 :顕微FT-IR IRT-300/FT-IR-4100 (日本分光製)
2.GPC
装 置 :HLC-8320 (東ソー製)
カラム :TSKgel GMHHR-H×2 (東ソー製)
溶 媒 :THF
温 度 :40℃
測定結果
図2にFT-IR測定結果を、図3にGPCによる分子量分布測定結果を示します。
FT-IRからは樹脂種に加え、劣化に伴う化学状態の違いに関する情報を得ることができます。図2より、3つのMPsは、いずれもベンゼン環由来の吸収が698、1600㎝-1にあり、PStであることが確認できます。更に、1580㎝-1にカルボニル由来と推定される吸収が確認できました。おそらく、環境履歴により、劣化し、生成した官能基だと考えられます。検討した3検体の中では最も小さい500μm品で最もカルボニル基が多く、劣化が進んでいると推定されます。
図3より、2mmと800μmのMPsに比べ、500μmのMPsはピーク全体が低分子量側へシフトしており、低分子量であることが分かりました。
これらの結果から、500μmのMPsは劣化が進み、低分子量化していること、即ち、劣化によって脆くなり、微小粒子化している事が示唆されました。