概要
ポリウレタンは様々な用途に使用される合成樹脂です。使用されている原料を解析するための方法の一つが分解です。本技術資料では、アルカリ加水分解と比較して簡便な亜臨界分解によりポリウレタンを分解し、原料のスクリーニング解析を行った例をご紹介します。
分析方法
ポリウレタンフォーム2 種(硬質、軟質)を高温高圧下で亜臨界分解し、窒素パージにより溶媒を除去しました。次いで、メタノールに再溶解させ、適切な濃度に希釈し、TOF-MSにより原料解析を行いました。
結果
硬質ポリウレタンフォーム
ESI-TOF-MSの結果を図1および図2に示します。プロピレンオキサイド(PO)由来のm/z 58 間隔のイオンが5 種類(▼、●、▲、■、★)検出されました。分子量から開始剤はそれぞれPOもしくは水(▼、m/z 200 付近)、ジエチレングリコール(●、m/z 300 付近)、トルエンジアミン(▲、m/z 500 付近)、トリエタノールアミン(■、m/z 500 付近)、スクロース(★、m/z 1000 付近)であることが分かりました。また、ジフェニルメタンジアミン(MDA)が検出されており、イソシアネート成分はMDIであることがわかりました。
軟質ポリウレタンフォーム
MALDI-TOF-MSの結果を図3 に示します。高分子量のポリオール成分はESI-TOF-MSでは検出されませんでしたが、MALDI-TOF-MSではm/z 7000 付近にイオンが検出されました。こちらのポリオールはコポリマーであり、開始剤の推定は困難です。コポリマーにおけるアルキレンオキサイド種や各アルキレンオキサイドの比率、末端構造(開始剤)の解析にはNMRが有効です。
まとめ
ポリウレタンフォームを高温高圧下で亜臨界分解し、TOF-MSからポリオール成分とイソシアネート成分の解析を行いました。硬質ポリウレタンフォームでは開始剤の異なるポリエーテル系ポリオール5 種とMDI由来のMDAが検出されました。軟質ポリウレタンフォームではm/z 7000 付近にポリオール成分が検出されました。
亜臨界分解の条件を調整することにより、エーテル系ポリオールの他、ポリエステル系ポリオールやポリカーボネート系ポリオールなどの解析も可能です。また、ウレタンフォームだけでなく、エラストマーの解析も可能です。