概要
X線回折(XRD)は、試料の結晶状態を調べることができる手法です。X線回折装置に試料を加熱する高温アタッチメント(~1200℃)を取り付け、試料を加熱しながら測定する高温XRDでは、結晶構造の相転移、物質の融解、熱膨張などを詳細に測定できます【図1】。測定時の雰囲気として、真空、乾燥空気、大気、N2やHe等の不活性ガスに対応しております。
分析方法・分析装置
格子定数の温度変化から熱膨張係数を算出するため、アルミナの高温XRD測定を実施しました。
測定条件
・XRD装置 | Rigaku SmartLab |
・高温アタッチメント | Anton Paar HTK 1200N |
・X線出力 | 45kV,200mA(Cuターゲット) |
・測定法 | 集中法 |
・2θ範囲 | 20-80deg. |
・スキャン速度 | 7deg./min |
・スキャンモード | 1D |
・測定温度 | 30℃~1000℃ |
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【図1】高温アタッチメント付属のXRD装置
結果
各測定温度で得られた回折パターンを【図2】に示します。これらの回折パターンをリートベルト解析することで、アルミナの格子定数を算出し【図3】、測定温度との関係を【図4】にまとめました。各軸の近似式の傾きから熱膨張係数を求めた結果、a軸は8.0×10-6[1/K]、c軸は8.9×10-6[1/K] と見積もられました。
このように、高温XRDから熱膨張係数の軸異方性の評価が可能です。
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【図2】各測定温度で得られた回折パターン
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【図3】 リートベルト解析結果(アルミナ30℃)
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【図4】格子定数変化と熱膨張係数の算出
* K. Momma and F. Izumi, J. Appl. Crystallogr. , 44 , 1272-1276 (2011).
適用分野
セラミックス、ゼオライト、電池・半導体材料、その他無機製品等
キーワード
高温XRD、in situ測定、リートベルト解析、格子定数、熱膨張係数、相転移、融解