概要
ステンレスは錆びにくく、鍋などの家庭用品から内外装材などの建築用途まで幅広く普及している材料 です。ステンレスが錆びにくい理由は、主成分の鉄(Fe)に添加したクロム(Cr)が酸素(O)と結びついて表面に厚さ数nmの非常に薄い酸化被膜を形成するからです。このため、酸化被膜の量や化学状態の把握は材料評価にとって非常に重要となります。
X線光電子分光法(ESCA)は、材料表面から数nmオーダー深さの定性定量分析が可能なため、酸化 被膜の構造解析に適しています。今回は市販のステンレス材料を対象として、酸化被膜を分析した事例を紹介します。
分析事例の紹介
通常、ステンレス材料は大気中に存在する有機汚染物で表面が汚れています。このため、有機汚染物が邪魔をして材料表面の酸化被膜を正しく分析できません。当社ではArガスクラスターイオン銃(GCIB)クリーニングにより有機汚染物のみを除去し、本来の酸化被膜量(酸素量)を評価できます。【図1、表1】
GCIBクリーニング後、酸化被膜は2種類(金属-O-金属、金属-OH)存在することが明らかとなりました。ピーク波形分離により、それぞれの成分比率を算出可能です。【図2、表2】
このように、GCIB-ESCAはステンレス材料の性能因子となる酸化被膜の構造解析に有用です。今回 ご紹介したGCIBクリーニングは、ステンレス以外の材料にも適用できます。【技術資料No.T1303】
適用分野
セラミックス、その無機製品、フラットパネルディスプレイ、電池・半導体材料
キーワード
ステンレス、SUS、酸化被膜、X線光電子分光法、ESCA、XPS、GCIB