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技術資料
No.T1904 | 2019.09.26

ポリエチレン樹脂中の添加剤分析

概要

 ポリエチレン樹脂製品中には、性能の維持・向上のために様々な添加剤が含まれており、その添加剤の種類や量を把握することは重要です。弊社ではポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の様々な樹脂中の各種添加剤の定性・定量分析を受託しております。今回は、ポリエチレン樹脂中の添加剤分析について紹介します。

分析内容

 添加剤分析のフロー図を図1、主な分析方法と分析成分を表1に示します。基本的には図1フロー①に従い、ポリエチレン中の添加剤を混合溶媒で抽出し、抽出物をGC(/MS)及びHPLCで分析します。GCは低分子量の添加剤に使用し、分子量が大きくGCで分析できない添加剤はHPLCで測定します。分解しやすいリン系の酸化防止剤などは、GCまたはHPLCで定性後、蛍光X線分析(XRF)で定量可能です。また、アンチブロッキング剤、充填剤のような無機物は図1フロー②に示すようにポリエチレンを灰化処理し、灰分のIR測定により分析できます。分析方法と分析成分、必要な試料量を表1に示します。測定したい添加剤の種類によっては、別のフローとなる場合がありますので、その場合にはご相談をお受けします。

【図1】添加剤分析のフロー

【図1】添加剤分析のフロー

【表1】分離物の分析方法と分析成分

分離物

主な分析方法

分析成分(項目)

必要試料量

バルク

XRF

7元素 (S, P, Ca, Zn, Si, Mg, Al)

5 g

抽出物

GC(/MS)
HPLC

酸化防止剤、帯電防止剤、
スリップ剤、紫外線吸収剤等

10 g

灰分

赤外分光法
(IR)

アンチブロッキング剤、
充填剤等の無機物

7 g

分析事例

 市販のポリチャック袋(LDPE)を図1のフローに従い、添加剤分析しました。

1. 定性分析

(1)GC

 試料の抽出物と標準試料のガスクロマトグラムを図2に示します。また、混合標準試料に含まれる添加剤を表2に示します。試料抽出液のガスクロマトグラム(図2の赤線)に検出されたピークは、標準試料(図2の青線)のBHT、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸アミド、Irganox 1076のピークと保持時間が一致しました。よってこの事から、試料にはこれらの添加剤が含まれていることが分かりました。

【図2】ポリチャック袋、及び標準試料のガスクロマトグラム

【図2】ポリチャック袋、及び標準試料のガスクロマトグラム

【表2】GC用混合標準試料

ピーク番号

添加剤*

ピーク番号

添加剤*

1

BHT (ジブチルヒドロキシトルエン)

10

Tinuvin 327

2

SEESORB 201

11

エルカ酸アミド

3

パルミチン酸

12

SEESORB 102

4

ステアリン酸

13

Tinuvin 120

5

Tinuvin P

14

Tinuvin 770

6

SEESORB 501

15

Irgafos 168

7

オレイン酸アミド

16

Irganox 1076

8

Tinuvin 326

17

DLDTP (ジラウリル-3,3’-

チオジプロピオン酸エステル)

9

スミライザーGM

(*:物質名、または登録商標にて記載)

(2)HPLC

 試料の抽出物と標準試料の液体クロマトグラムを図3に示します。また、混合標準試料に含まれる添加剤を表3に示します。試料抽出液の液体クロマトグラム(図3の赤線)に検出されたピークは、標準試料(図3の青線)のBHT、Irganox 1076のピークと保持時間が一致しました。よってこの事から、試料にはこれらの添加剤が含まれていることが分かりました。

【図3】ポリチャック袋、及び標準試料の液体クロマトグラム

【図3】ポリチャック袋、及び標準試料の液体クロマトグラム

【表3】 HPLC用混合標準試料

ピーク番号

添加剤*

ピーク番号

添加剤*

1

SEESORB 501

9

Tinuvin 234

2

SEESORB 201

10

Tinuvin 326

3

BHT (ジブチルヒドロキシトルエン)

11

Irganox 1010

4

Tinuvin P

12

Tinuvin 327

5

スミライザーGM

13

Irganox 1330

6

Tinuvin 120

14

Irganox 565

7

SEESORB 102

15

Irganox 1076

8

Irganox 3114

16

Irgafos 168

(*:物質名、または登録商標にて記載)

(3)XRF

 試料をXRF分析した結果、S、Caが検出されました。GCでステアリン酸が検出されたため、Caはステアリン酸カルシウムと推測されました。

【図4】XRF分析結果(S、Ca)

【図4】XRF分析結果(SCa

2. 定量分析

 試料から検出された成分のうち、Irganox 1076についてGCで定量しました。図5に示すように、試料、及びIrganox 1076標準試料のピーク面積を測定し、標準試料の濃度とピーク面積から作成した検量線を用いて、試料抽出物中のIrganox 1076の濃度を計算しました。その結果、抽出物中に含まれているIrganox 1076の量は290 ppmと定量されました。

【図5】試料抽出物のIrganox 1076のピーク面積(左)と、Irganox 1076標準試料検量線(右)

【図5】試料抽出物のIrganox 1076のピーク面積()と、Irganox 1076標準試料検量線()

まとめ

 以上のように、試料のXRF分析、及び試料抽出物のGC、HPLC測定を行うことで、市販のポリチャック袋にはBHT、パルミチン酸、ステアリン酸(ステアリン酸カルシウム)、オレイン酸アミド、Irganox 1076、及びSを含む添加剤が含まれていると推定されました。また、GCで検量線を作成することで、試料抽出物中のIrganox 1076は290 ppmと定量されました。このような方法によって、ポリエチレン等の様々な樹脂中の各種添加剤の定性・定量が可能です。

適用分野
プラスチック、その他高分子材料
キーワード
ポリエチレン、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、添加剤、GC、HPLC

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