概要
近年、温度やpHなどの周辺環境に合わせて諸物性が変化する「スマートポリマー材料」が注目されている。その中でもポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PANIPAM)やポリメチルビニルメチルエーテル(PVME)は生理温度付近で親水性から疎水性へ変化する「温度感受性ポリマー」として知られており、医学や薬学分野での利用が期待されている。そこで、本技術資料では、EMS粘度計を用いてPVME水溶液の相転移温度を評価した。
試料
10%PVME水溶液(東京化成工業株式会社製)
分析手法
EMS粘度計:EMS-1000(京都電子工業株式会社製)【図1】
金 属 球:φ2mm
測 定 条 件 :25℃~35℃における、溶液粘度を評価
結果
【図2】に10%PVME水溶液の溶液粘度の温度依存性を示す。32℃~33℃において急激な溶液粘度の低下が認められた。これは、本温度領域においてPVMEが親水性から疎水性へと相転移したことで、PVMEが析出し、溶液中のPVME濃度が低下したためである。このようにEMS粘度計を用いることで、温度感受性ポリマーの相転移温度を簡便に評価することが可能である。
まとめ
EMS粘度計を用いることで、温度感受性ポリマーの相転移温度を簡便に評価することが出来る。また、温度感受性ポリマーの相転移温度は溶媒条件(pH、塩類等)の影響を受ける。EMS粘度計はガラスセルを用いて測定するため、各種溶媒*に対応可能であり、溶媒条件の検討も可能である。
*アルミニウム(Al)製の金属球を用いて測定を行うため、Alが損傷する溶媒は測定困難
適用分野
高分子材料、生体材料
キーワード
温度感受性ポリマー、PNIPAM、PVME、LCST、ドラッグデリバリー