概要
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はGC、IC、GPC(SEC)等、数あるクロマトグラフィーの中でも代表的な分離分析手法であり、GCでは分析が困難な高沸点化合物や熱分解性化合物等を分析可能であることから一般に広く用いられています。
本技術資料では、HPLCでよく使用される分離モードについてご紹介します。
分離の原理と測定例
代表的な分離モードの一覧を表1に示します。
1.逆相モード(Reversed Phase Chromatography/RPC)
頻繁に用いられる分離モードである逆相は、C18基やC8基をカラム基材に結合した固定相を有し、低極性化合物を低極性の固定相と相互作用させることで保持するモードです。図1に逆相モードの測定例として、BCFNのクロマトグラムを示します。逆相モードには官能基の種類、シラノール基のエンドキャップ方式等の違いにより様々な種類のカラムが存在し、目的とする分離に適したカラムを選択する必要があります。
2.順相モード(Normal Phase Chromatography/NPC)
順相モードは逆相モードとは逆に、固定相を高極性、移動相を低極性とし、カラムとの相互作用により分離を行う古典的な分離モードです。固定相にはシリカゲルやアルミナ等、移動相にはヘキサンやクロロホルム等が用いられ、脂溶性化合物の分離に適しています。
3.HILICモード(Hydrophilic Interaction Chromatography)
HILICとはHydrophilic Interaction Chromatographyの略であり、親水性相互作用クロマトグラフィーと呼ばれ、逆相では保持が難しいような極性の高い化合物を分析するモードです。順相モードとの違いは、移動相にアセトニトリルや水等の比較的極性の高い溶媒を使用することであり、LC-MS分析に適した条件ということで糖、糖鎖、ペプチド等の親水性化合物の分析に用いられています(図2)。
4.イオン交換モード
スルホプロピル基(陽イオン交換)や4級アンモニウム基(陰イオン交換)等のイオン交換基を結合した固定相を使用し、イオン性化合物を固定相との静電的な親和力により保持・分離するモードです。対象が無機イオンの場合はイオンクロマトグラフィー(IC)として別に扱うことがあります。イオン交換モードの詳細についてはICの資料をご参照ください。
5.イオン排除モード
有機酸のような弱酸はイオン交換モードでは固定相との静電的な親和力が小さいため、保持が弱く溶出が早くなります。そういった場合に有効なのがイオン排除モードで、測定成分と固定相の電荷を揃えることで生じるイオン反発の程度の違いを利用して分離します(図3)。また、固定相と移動相の分配効果を利用してアルコールやグリコール等の分離にも用いられます(図4)。
まとめ
今回、HPLCの分離モードとして5種類のモードをご紹介しました。測定対象化合物の性質や目的とする分離に応じてこれらのモードを使いこなすことで、様々な化合物の分離・定性・定量が可能となります。弊社では東ソー製のカラムを中心に幅広いHPLCカラムを取り揃えており、様々な条件のHPLC分析にご対応可能です。