概要
複数の樹脂を混合したポリマーアロイは、ポリマーやフィラーのモルフォロジーが特性に寄与します。自動車部品等に用いられるポリカーボネート(PC)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂中のフィラーを対象として、透過電子顕微鏡(TEM)及び元素マッピングによりフィラーの分布状態や成分を明らかにしました。
分析装置・分析方法
装 置 :電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM) / エネルギー分散型X線分析器(EDS)
試料作製方法 :ミクロトームによる超薄切片作製および電子染色※
※重金属を含む染色によって電子密度を高め観察像のコントラストを上げる手法
試料
PC/PBT樹脂(市販品)
結果
1.フィラーの分布状態解析
PC/PBT樹脂中のポリマーとフィラーは、電子染色を施したTEM像で異なるコントラストで観察されます【図1】。フィラー(コントラストが最も暗い粒子)は、nm~サブμmの様々な大きさでPC/PBT樹脂中に分布している様子が明らかとなりました。
2.フィラーの成分解析
元素マッピングを行った結果、フィラーからチタン(Ti)、アンチモン(Sb)、酸素(O)が強く検出されました【図2】。この結果より、樹脂に含まれる金属酸化物系導電フィラーの存在が判明し、その成分は酸化アンチモンをドープした酸化チタン系(SbO2/TiO2)と推定できます1)。
まとめ
TEM/EDSにより、ポリマーアロイの特性に影響するフィラーの分散状態を可視化でき、成分の推定が可能です。ポリマー成分については、高倍率測定によってラメラ構造も確認できます【技術レポートNo.T2104】。
本手法はPC/PBT樹脂以外のポリマーアロイに適用でき、材料の特性発現に影響を及ぼすモルフォロジーの明確化が可能です。
参考文献
1) カーボン系導電性フィラーの選定・配合設計,技術情報協会セミナーテキスト(2014年4月22日)