1.概要
GPC(もしくはSEC;サイズ排除クロマトグラフィー)にFT-IR検出器を併用することで、共重合体の組成分布解析が可能になります。ここでは、溶媒蒸発型のGPC-FTIRを用いて、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS, またはSAN)の組成分布解析を行った例を紹介します。
2.GPC-FTIR装置
溶媒蒸発型GPC-FTIR装置は、カラムから溶出した溶液をネブライザーから噴霧して溶離液を除去し、残った試料を回転するゲルマニウム(Ge)板に連続的に吹き付けていきます。次に、このGe板をFT-IRの試料室の専用ユニットにセットし、Ge板を回転させながら、固着した溶出成分のIR測定を連続的に行います。これにより、溶出成分の組成を連続的に分析することが可能となります。
3.分析例のご紹介
【測定条件】
カ ラ ム : TSKgel GMHHR-H (7.8mmφ×30cm) 2本 (東ソー製)
溶 離 液 : THF
カラム温度 : 40℃
流 速 : 1mL/min
試 料 濃 度 : 2mg/mL
注 入 量 : 100μL
【試料】
アクリロニトリル-スチレン共重合体 (Scientific Polymer Products製)
・アクリロニトリル含有量 : 20,25,30 mol%
【結果】
アクリロニトリル-スチレン共重合体の組成分布分析結果を図1に示します。ここでは、RI検出器(示差屈折率計)を用いて得られた微分分子量分布曲線と、FT-IRによって得られた吸光度比(A2235/A2925)の重ね書きを示しました。吸光度比の縦軸(A2235/A2925)は、ニトリル基の伸縮振動に起因する2235cm-1の吸収と、主鎖のメチレン基の伸縮振動に起因する2925cm-1の吸光度比を示しており、値が大きいほど、アクリロニトリル含有量が多くなることを示しています。今回の試料は、すべてほぼ一定の組成分布であることが確認できました。
4.まとめ
溶媒蒸発型のGPC-FTIRを用いることで、各種共重合体の組成分布分析を行うことができ、ポリマーの重合制御や特性解析などに、非常に有用な情報をご提供することが可能となります。