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技術資料
No.T1920 | 2020.03.30

生分解性樹脂の光劣化による分子量変化③

~ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)~

概要

高分子材料は、長時間の光照射を受けると、分子切断や架橋形成といった劣化を生じ、分子量が変化します。分子量は、強度や熱特性、加工性に大きく影響するパラメーターですので、劣化前後の分子量を比較することは非常に重要です。
ここでは、生分解性樹脂の一つであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)について、光照射(耐候性試験)を行い、GPC(SEC)による分子量測定を行いました。

分析

1. 試料

PBATフィルム

PBAT

2. 耐候性試験

装置:アイスーパーUVテスター SUV-W161(岩崎電機製)
温度:50℃
湿度:40%
照度:100mW/cm2

3. 分析条件

装 置:HLC-8320GPC (東ソー製)
カラム:TSKgel GMHHR-H × 2本 (東ソー製)
溶 媒:クロロホルム

結果

GPCによって得られた、光照射されたPBATの分子量分布曲線を図1に示します。

【図1】光照射したPBATの分子量分布曲線

図1においては、光照射時間が3時間~6時間の間で、大きく分子量低下を示していることが分かります。一方、光照射時間と数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、およびz平均分子量(Mz)との関係を図2に示しますが、PBATでは、6時間までの間で平均分子量が大きく減少しているものの、その後の分子量低下は僅かとなっています。
今回のGPC測定では、PBATが可溶なクロロホルム系GPCを用いましたが、光照射されたPBATは、クロロホルムに対する溶解度が著しく低下しました。
PBATのGPCクロマトグラムの相対ピーク面積(未照射試料のピーク面積を100とした時の相対ピーク面積)と光照射時間との関係を図3に示します。この図から、6時間以降では可溶分のピーク面積が10%以下と、試料がほとんど溶解していなかったことが分かりました。従って、PBATは光劣化によって架橋を形成してクロロホルムに不溶となり、ごく一部の低分子量成分のみが溶解したため、可溶分の平均分子量がほぼ一定になったと考えられます。

【図2】光照射時間と平均分子量の関係
【図3】光照射時間と相対ピーク面積の関係
適用分野
GPC、SEC、耐候性試験、光劣化
キーワード
生分解性樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート、PBAT

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