概要
溶液NMRを用いて1H原子核の緩和時間を解析し、溶液内における分子の状態や運動性、分子間相互作用等を評価することが可能です。弊社では、通常の1次元の緩和測定を2次元NMRに展開し、1Hピーク重複領域においても各1H原子核の緩和時間を解析可能です。今回は、2次元1H-13C HSQC測定をベースとした1H原子核の縦(T1H)緩和時間の解析例をご紹介します。
分析方法・分析装置
・分析方法:2次元1H-13C T1H –HSQC*1 *1 Heteronuclear single quantum coherence
・分析装置:700MHz NMR、500MHz NMR
以下にパルスシーケンスダイアグラムを示します。
試料
ラクトース(ガラクトースとグルコースがβ-1,4-グリコシド結合した二糖)の重水溶液(5wt%)
結果
ラクトースの1次元1H NMRスペクトルとT1H緩和時間解析結果を図2に示します。単独で存在する1HピークについてはT1H緩和時間を算出することができますが、ピーク重複領域は一意的なT1H緩和時間の算出は不可能でした。
今回、2次元1H-13C T1H–HSQCにより13C方向に各1Hピークを分離することで、ピーク重複領域の各1H原子核についても一意的なT1H緩和時間の算出が可能となりました(図3)。ガラクトース(Gal)残基内においても、1位(グリコシド結合部位)の1Hの方が3位の1HよりもT1H緩和時間が短く、局所的な分子運動が制限されていることが分かりました。
まとめ
1H原子核のT1H緩和時間を解析することで、分子の状態や運動性を評価することが可能です。有機化合物の分子構造の確認や相互作用の検出、分子サイズの評価等に役立つと期待されます。
適用分野
NMR、運動性、構造解析、相互作用、分子サイズ
キーワード
糖鎖、天然物、有機化合物、分子構造解析、医薬品、化粧品、農薬